そんなことで、そう簡単には人の生活習慣は変わらない。生活習慣を変えること、それはすなわち「今までのその人の生きざまを変える」ことであり、「人の人生観を変える」こと、そのものである。

畏れ多くも、人ひとりの人生に踏み込むことなのだ。生半可な思いでは到底、できることではない。誠実に根拠と熱意を持って「人の人生観、今までの生きざまを変える」支援をする、それが保健師の「業(なりわい)」であり、「保健指導」の「根幹」なのだ。

「健康で幸せに生きたい」。そう願う人々を前にした時、または病気や災害などによるダメージによって健康を阻まれ、不安を抱えもがき苦しむ人々を前にした時、「この人の幸せのために私は保健師として何ができるのだろう」、そう考え続ける、それが保健師魂だ。

そして、その人の健康を阻む課題を解決するために、その人の周囲環境の中から「応援団」を見つける。そして使える社会資源をマックスに使い、その人自身が課題を乗り越えていくのをサポートする仕組み(ネットワーク)を作る、それが「保健指導」なのだ。

つまり保健師が行う「保健指導」とは保健師魂を持って、「健康に幸せに生きたい」と願うその人をサポートする仕組みを作る(環境整備)ことなのだ。

保健師の醍醐味は、何にも無いところから必要な関係性を作り、環境を作ることだ。

私は、現場が大好きだ。ケースが暮らす地域を駆けずり回り、あっちこっちの関係者と作戦会議を開きながら、ケースのニード(幸せ)のために作戦がうまく進むように調整して必要な環境を作り出す、そのプロセスが大好きだ。

そして、その作戦が功を奏した時のごほうびは、他ならない「ケースの笑顔」だ。それが何より、うれしい。だから、なりふり構わず滅私奉公をする。それが私の保健師としての仕事の仕方だった。

切り札

保健師はこちらの土俵で相撲を取るのではなく、相手の土俵に上がり込み、そのふところに入り込んで、その人の「生活環境を調整する」縁の下の力持ちとなる。

そのプロセスもまた、保健師としての醍醐味だ。相手との信頼関係が築けなくては、縁の下の力持ちになることは不可能だ。

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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