【前回の記事を読む】認知能力低下の問題に目をつぶってはいけない。それは、知人の話から両親の問題になり、やがては自身に降りかかる重大な問題に…

第一章 認知症におけるEQ

感動する能力

私がこの文章を特に大事だと感じたのは、「大人と子どもでは時間の流れ方が違う、そしてその違いは非認知能力つまり感性の違いによって生じる」ということを具体的に示しているからです。

感性の違いが時間の流れさえも変えてしまうという事実は私にとっては衝撃的なものでした。

この文章の中にある通り、子どもは「タコさんウィンナー」を見ただけで喜ぶ感性を持っています。この事実はとても重要です。

大人はものの価値を無意識に値段でとらえてしまいます。例えばレストランなどで壁にかかっている絵をなにげなく見て何も感じなかったのに、その絵が数億円の絵だと知らされたら、全然見る目が変わってしまいます。

もしかしたら食事そっちのけでずっとその絵を見ているかもしれません。逆に高価でないものに関しては、ほとんど興味を示さないのが普通でしょう。それくらい大人は感性が鈍っていて、素直に感動する力を失っているのです。

しかし大人であっても、もしこの小学生のように高価でないウインナーを見て嬉しいと感じる感性を持っていれば、その方は価値ある時間をたくさん過ごせます。つまり感動する力をたくさん持っている人ほど、お得だということです。

すべての大人は感動する力が弱くなり、価値を得にくくなるのでしょうか? いいえ、そうではありません。感動する力はEQを鍛えることで強くすることができます。

毎週老人ホームでお会いするおばあちゃんが、デイサービスで作った塗り絵を私に見せてくれます。毎回、作ったものすべてです。1個も省略されません。そしてすべて壁に貼ろうとされるので、壁が足りなくなったといつも言われています。

塗り絵一つでもこれだけ感動できるのだなと毎週感心していましたが、EQの存在を知ってこのおばあちゃんの変わった行動は、感性の豊かさを示していたのだと合点がいきました。