俺は意を決して沙優に俺の気持ちを打ち明けた。

「沙優、俺はお前を愛している。華菜にはもう愛情を感じていない、だから別れを告げた」

「そんな、華菜さんがかわいそうです」

「愛情がないのに一緒にいる方が残酷だろ」

「それはそうですけど……」

沙優は少し考えていた。

「沙優、お前を愛している」

「駄目です、私はカモフラージュだから引き受けたんです。南條さんとは釣り合いが取れません」

「沙優、俺のこと大好きってメモ残してくれたよな」

沙優は頬を真っ赤に染めて恥ずかしがった。

「俺と結婚してくれ」

俺は沙優を抱き寄せた。見つめ合い吸い込まれるようにキスをした。しかし、結婚に対してイエスの答えは貰えなかった。

「沙優、一緒に帰ろう」

「私、どうしたらいいのか分かりません」

とにかく沙優を連れ帰るのが先決と思い、カモフラージュの関係を続ける約束をした。そして、沙優とマンションに向かった。

沙優は俺を大好きだと言ってくれた。しかし、誰かの犠牲の上に成り立つ幸せはあり得ないとのことだった。しかも、沙優は驚く言葉を俺に伝えた。結婚はこの先誰ともしないと……

「沙優、どうしてなんだ、教えてくれ」

沙優は静かに話し始めた。

「もう、一人になりたくありません。結婚式当日、圭人が事故に遭って即死状態と聞いた時の私の気持ち、分かりますか、あんな思いは二度としたくないんです」

「沙優、俺はバイクには乗らないし、お前を一人にはしない、約束する」

「圭人だって同じこと言ってくれたのに、結婚式場には現れなかったんですよ」

「沙優」

沙優は目に涙を浮かべていた。俺は沙優を連れてマンションに戻った。婚約者のカモフラージュとして。

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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