【前回の記事を読む】「本当の婚約者になれ」カモフラージュのはずがまさかの格上げ?! 私の頭の中はパニック寸前で…
第五章 不確かな愛
俺は沙優に惹かれていた。沙優を抱きしめて、俺の腕の中ですやすや眠る沙優を誰にも渡したくないと強く感じた。こんなにも女を深く愛する事があるなんて、誰が想像出来ただろうか。
しかし、沙優は俺の彼女の存在を凄く気にしている。彼女とは自然消滅もありうるかもしれない、それほど愛情を感じていない。まさか、彼女の方から連絡が入り、詰め寄られるなんて予想もつかなかった。
「貢、久しぶり、元気だったかしら」
「華菜、どうしたんだ」
彼女は俺のマンションにやってきた。
「テレビ中継を見たわ、婚約したのね、おめでとう」
「ああ、前から話してあったと思うが……」
「カモフラージュでしょ」
「そのつもりだったが、本気になった」
彼女はびっくりした表情を見せた。
「貢、どういうことなの」
「言葉通りだ、華菜、俺と別れてくれ」
「本気で言ってるの?」
「俺は本気だ、婚約した彼女と結婚する、彼女を愛している」
華菜は俺の頬を平手打ちした。
「私は別れないから。確かに結婚の話は断ったけど、別れるとは一言も言ってないから」
「俺の立場も考えてくれ」
「だから、カモフラージュなんでしょ。私達別れる必要ないんじゃないの」
「はじめはそのつもりだった。でも彼女にどんどん惹かれていく自分に気づいた」
「貢、目を覚まして、その女に騙されているのよ」
いつも冷静な華菜が珍しく俺に食ってかかった。
「沙優はそんな女じゃない」