それが臨時で顧問になったのは、先月、顧問の平良先生が倒れたせいだ。脳梗塞だった。

幸い一命は取り留めたらしいが、社会復帰までにはかなり時間がかかるとのことで、本当は半身不随になっているとか、いろんな噂はあったけれど、いずれにしても誰かを代わりに立てなければならない状況に変わりはなかった。

滝沢は本当に嫌な奴だった。もうすぐ三十にもなるくせに若ぶって、格好ばかりつけていた。男子生徒には威張りちらして、女子にはちゃらちゃら冗談を言ってはやたらとかまう。

何かですごい怒った時に、高い声が女みたいにもっと高くなって、だっせぇ、と思った。男子にも女子にも人気なんてなかったけど、かまわれて喜んだ一部の女子には追いかけられて、自分はモテると勘違いしているような薄っぺらい奴だった。

その滝沢が、だいちゃんを目の敵のようにして陰湿にいじめ始めた。

全くボールにさわらせない日があるかと思うと、今日みたいにずっとピッチングの練習をさせたままフルシカトを決め込んでいたり、そんなひどい扱いにとうとう我慢出来なくなった僕は、陸上部の顧問の小竹先生にあれはあんまりじゃないかと訴えた。

「滝沢先生には滝沢先生の考えというか、やり方があるんだと思うから……」