通話を終えたイケちゃんがタマちゃんに連絡すると、すぐに本人が出た。
「あら、ナギちゃん! 久しぶりじゃない。どうした、元気してる?」
成人式以来なので久々には違いないが、彼女のテンションの高さに戸惑(とまど)いながら話し出す。
「うん、元気だよ。あのね、同窓会の連絡なの」
「同窓会? 成人式の後でクラス会をやるって言ってたけど、結局やってないよね」
「やってないと思う。それでね、今回は3クラスが合同の同窓会なんだって」
「ふ〜ん、いつやるの?」
「メモしてくれる?」
「はい、どうぞ」
「来月の第2日曜日の午後3時にね、去年改築した高校の体育館に集合みたいよ。立食パーティーみたいな感じだから会費は1000円だってさ。私には杏子が連絡くれたの」
「えっ、杏子が幹事なの?」
「違うよ。これって連絡網らしいの」
「じゃあ、私からも誰かに電話するの?」
「タマちゃんはしなくていいみたい。私も電話したのはタマちゃんだけだよ」
「変な連絡網ね。何人くらい来るのかしら……」
「出欠を取らないから当日までわからないと思う」
「不思議な同窓会だこと……ナギちゃんは行く?」
「卒業して10年だよね。どうしようかな……タマちゃんは?」
「同窓会でカレシでも見つけようか?」
「本気で言ってるの?」
「ナギちゃん独身だよね。カレシはいるの?」
「今はいないよ」
「ナギちゃんが行くなら私も行く!」
「そうなの、どうしようかな……行く気になったら連絡するよ」
「わかった。じゃあ、またね」
通話が終わると、イケちゃんはどっと疲れた。タマちゃんが言っていたことの半分は冗談かもしれないけど、もう半分はかなり本気だったと思う。
『同窓会でカレシを見つけるか……』
定番のシチュエーションだが、20代の終わりが近づいているので遊び感覚というわけにもいかない。将来を考えた真剣モードでやってくる人も多そうだ。
同窓会では、自分の近況をあれこれと聞かれるかもしれない。それを話すのが面倒な気がしているけど、それ以外にも参加者の半分くらいは既婚(きこん)者だったりして会話が合わないかもしれない。
ネガティブなことばかりが頭の中をかけめぐり、とりあえず同窓会の件は保留(ほりゅう)と決めた。
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