カホに振られたユーが学校で僕に話しかけてきた。
「タッキー、知ってるかい? マコトのこと。高校行かないんだってよ」
「えっ、聞いてないぜ」
「いや、俺も柔道部の人から聞いたんだ。柔道の強い高校から誘われていたらしいんだけど、行かないって。働くんだってよ」
僕は急に不安になってそのままマコトのいる教室に向かった。それにしてもユーはカホに振られたのに元気なもんだ。けろっとしている。
振られた翌日は、僕とマコトのところに来て、
「もう僕の人生はなくなった。生きている意味がない」
とか
「僕は一生、一人で生きていくんだ」
とか、訳の分からないことを言っていたが、三日もすると平気でカホとも笑って話していた。
僕は多少ユーのことは心配したが、それを見て、こいつは千年生きるんじゃないかと思い、心配するのをやめた。今のマコトの方が心配だ。
教室に行くと、マコトはいつものように友達と話していて、元気に笑っていたが、僕とユーを見つけると、椅子から立って、僕たちの方にきた。
「どうしたんだ? 二人して、何かあったのか?」
「何かって……お前、高校行かないんだって?」
と僕が言うと
「あっ、話してなかったっけ? ごめん、ごめん。父ちゃん、手けがしてさ、働けたり、働けなかったりなんだよ。高校なんか行けねえよ」
あっさりと、しかも明るくマコトは話した。
「一足早く働くからさ、まっ、よろしく」
僕とユーは、何も言えなかったけど、マコトから直接話を聞いて安心した。僕はマコトの話を聞いてユーと目配せした。
「そうか、じゃ、中学の卒業前に、みんなでカホの家に集まって、もんじゃ焼き食べようよ」
ユーが言った。
「いいね、それ」
マコトが言い、僕が頷いた。
日本は貧乏な国になった。いかに国がそれを誤魔化そうとしても、僕たちは小学生の頃から、それをよく知っている。
給食費を払えない子はザラにいたし、会社の倒産やリストラによって急に友達が学校に来なくなったり、転校したりは珍しくはなかった。
街の商店街は、近くの大型店に客を奪われてしまい、段々と客が来なくなってきて、いつしかお店のシャッターが下ろされたりしていた。
そうかと思えば休みの度に海外旅行に行く生徒。どうしてコイツだけ毎年海外行けるのか、どうして僕たちは行けないのか、その同級生を見て、思ったものだ。
そんな僕たちではどうしようもないことのために、僕たちの運命は変わっていく。
中学卒業前の土曜日だった。僕とマコトとユーはカホの店で、僕らの卒業を祝った。
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