666
今日は変わった日だった。お客さんからお菓子などを貰うことは再三あるが、今日に限っては三組のお客さんからそれがあった。最初は朝一で乗せた子連れの女性客から大福もちを一個、二人目の高齢者の女性客からキャンディーを一袋と三人目の中年男性客から缶コーヒーを一本頂いた。偶然は重なり、奇妙な事象も重なる。
英良は仕事帰りに近くのコンビニでチキンナゲットとフライドポテトと百円の缶ビールを二本買って帰途についたが、何かがおかしいと感じた。アパートの入り口まであと少しの所まで来た時に両足が何かに引っ掛かり動けなくなった。まるで傘の柄の部分のフックで捉えられたように。
「何だ!」次の瞬間、左の肩が急に重たくなった。重たい何かの力が加わった感じがした。
「な、何だ……」耳鳴りがした。金属音のような音が後頭部の辺りから響いてくる。
「小さき光を持つものよ……何が望みだ……答えよ」低く地の底から聞こえるような声が響いた。
「誰だ!」
「ふふ……」変な声だった。重苦しく、いつかどこかで感じた感覚に襲われた。「悪戯か ……それとも亡者……」そう思った瞬間、少し離れた所に奇妙な灯火が現れた。英良は懐中電灯の光かと最初は思ったが、違った。
「あれは?」その光は、だんだん英良の近くまで来た。丸かと思ったそれは数字の6。6が三つ。666が赤く灯っていた。
「……血が必要だ……聖なる女の血が……」
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