これから神と優里とのシンクロには時間がかかります。今日明日というわけにはいきません。まだ少しの時間はかかるでしょう。私は優里に仕える準備を始めます。英良、貴方も選ばれし者です。信じるも信じないも貴方次第、そして優里を守り平和と安寧を作るのも峠原英良、貴方次第です。

この後にエリーナ・モーセから貴方にお言葉が届くでしょう。神が人間と言葉を交わすということはあり得ないのですが、それを私は初めて目の当たりにします。心を平静にしてお待ちなさい英良。それともう一つ貴方に伝えなければいけないことがあります。既に分かっていますね?」ジェシカは言う。

「鏑木という闇導師のことです。かなり梃子(てこ)摺(ず)っているようですね? 血滅師の血を引くものとして人界へ転生した闇の使い手のことです。シャーマンによるとこの者は古代の仏戦争で暗躍した闇を纏った仏を操るようです。気を付けなさい英良。貴方の力があれば負けることはないと思いますが。

それと日本古来の仏が貴方に付いています。巨石の仏を後盾に持つ光ある女性も貴方の仲間です。力を合わせて闇を駆逐なさい。分かりますね光の子よ。平和で心の安らぎを……シャローム」

英良は言葉の響きに引き込まれ身体が急激に下降していった。エレベーターで急に下降していくような感覚になり意識が遠のいていく。

気が付くと今度は真っ暗で直径が二メートルほどのチューブの中に立っていたが足が思うように動かない。必死にもがいて足を動かそうとしても早く歩けない。まるでスローモーションの映像の中にいて自分だけが地球の重力に逆らって歩いているようだ。

はるか前方に小さい光が見えてきた。ここはトンネルの中なのか。それにしては足元が不安定に感じる。砂浜なのかうまく歩けない。地面全体が英良の前進を阻もうとしているようだ。どれだけ時間が経っただろうか? 光がだんだん大きく見えてくる。そこは出口なのか? 出口に辿り着き下を見たが白くて何も見えない。英良の意識はその白い波へ飲み込まれていった。

英良は短い吐息と共に目が覚めた。掛け時計を見ると午前五時五十二分。すごい疲労感があり、まるでフルマラソンでもしたようだ。疲れた、英良はため息をついた。