防犯カメラに映っていたシーンは……
自転車置場近くの植栽の中で、フンが見つかった。しばらくして、また同じことが起きた。管理員がその都度、おがくずをまくなどして処理をしていたが、あるとき、理事会でもこのことが問題になった。
「マンションの居住者が飼っている犬のフンなのではないか。散歩の帰りに植栽の中でフンをさせているのではないか」という意見が大半を占めた。ほとんどの理事は犬を飼育している「誰か」のマナー違反だと考えた。
理事会では犯人を特定するために自転車置場に設置している防犯カメラを再生することにした。ちょうど植栽の辺りも映っているはずである。
そこで理事会では、管理会社の担当者も立ち会い、カメラ映像を再生した。
すると、あろうことか、そこにはマンションに住む高齢女性がまさに洋服の裾をまくり上げ、大便をするシーンが映っていた。理事会の場が凍り付いたのは言うまでもない。
その後、理事会では、その高齢女性のいる部屋を訪問し、家族から本人に対して注意していただくよう申し入れをした。
この事件の後、家族から強く注意をされたのであろう、高齢女性が毎日のように管理事務室を訪問してくるようになった。
管理員に対して「私はあなたに犯人にされた、私がそんなことをするはずがない」と抗議し続ける。
管理員もどうすることもできず、すっかり憔悴してしまった。
この話は実話である。ご本人にしても、ご家族にしても非常に恥ずかしい出来事であったろう。
また、理事会も、そんなシーンがあるとは思いもよらず、家族にどう伝えるべきか相当に悩んだであろう。誰もが不幸な状況に置かれた出来事であった。
この後、この高齢女性はどうなったか。あるときから、ぷっつりとその姿を見かけることがなくなったそうだ。担当者のもとには、高齢者施設に入所したのではないか、そんな話がどこからともなく聞こえてきた。
認知症高齢者の方とともに暮らすにはどうしたらいいか。まだ、試行錯誤中のマンションも多い。これは、その答えを見つけることができなかった事例である。
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