その他にも原因が明らかでなく、従って有効な解決策もない難病や不定愁訴に悩む人は沢山いて、それらの患者が常時来院している。みつる歯科が、それらの症状の改善についてかなりの実績を持っているのを伝え聞いて来院するのだ。
アトピーなどは咬み合わせのバランスを調整し、頭の重心が脊柱の中心に合うように調整するだけで百パーセント治ると草介は思っている。しかしその治療に際しては、今まで使用していたステロイドを止めるか、徐々に減らし、結果的には止めるよう指導しなければならない。それで本当によく治る。
しかし横槍が入ることがある。これまで診てきた医師から、歯科医師が薬を止めさせるのは越権行為だなどと言ってくることがある。直接言ってこなくても歯科医師会の関係者にクレームをつけるケースもあった。
腰痛も然りだ。腰痛のほとんどは腰椎の歪みが原因になっていて、咬み合わせを調整し、姿勢の歪みが取れれば驚くほどよく治る。咬み合わせのズレを正し、頭部の重心が脊柱の中心に合致すれば、脊柱は自然なカーブになる。
その結果、腰椎の歪みやズレが正され、腰椎の椎骨によって神経が圧迫を受けることがなくなり、腰痛は解消するのだ。既に腰の手術の日程が決まっている患者が相談に来ることもあって、その時咬み合わせ試験をするだけで、その場で疼痛が解消したり、大幅改善したりする。
咬み合わせを治せば腰痛が解消することを知れば患者は手術を中止することになって、その結果草介に対する非難が伝わってくることもある。
草介は歯の治療をするだけなので、医師法に抵触することはないのだが、雑音は起き、それが歯科関係者に伝わり、草介は困った偏屈者だという評価が同業者の間に広がることになる。
それに加えて草介の歯科治療は一般的な歯科医師の趨勢(すうせい)と著しく異なっていて、それが煙たがられ、違和感を持たれ、異端者としてのレッテルを貼られる原因になる。
「あれは新興宗教の教祖で、非科学的だ」と歯科団体の雑誌に書かれたこともある。最近の草介はそのような空気にうんざりしていて、同業者との付き合いは少なくなってしまっている。
もっとも草介はそれを気にはしていない。異質な人種と無理をして付き合う必要はないと考えている。
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次回更新は1月25日(土)、21時の予定です。
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