「ね、誠くん?」と私が援軍を頼もうとすると、「僕、まだ子どもだから、な~んも言えないし~」とウインクをしてきました。

母をなんとか言い負かそうと口を開きかけたとき、店の奥でブタメンを食べていた三人組の高校生の一人が話に加わってきました。

「男だったら、いつでもお巡りに職質される覚悟をしていないとダメだぞ」

「なんでなの? それってひどくない?」と私が怒りを込めて聞き返すと、高校生は達観したように言うのです。

「お巡りはさ~、俺たち高校生はみんな万引きする生き物だと思っているんだよ」 

「なぁ、誠くんだっけ……?学校はどこ?」

「大中です」「じゃあ、俺の後輩だな。だったら、田中って体育の先生、知っているか?」

「田中先生なら僕、習っています」

「あいつはさ、いつでも生徒の味方だから――お巡りと揉めたら、すぐに相談に行ったらいいよ」

そう言われて、誠くんはホッとしたような顔をしました。

「わかりました。ありがとうございます」

「男の子って大変なんだね……」と母が呟くと、「おばさん。男ってさ、女と違って、面倒くさいことが結構あるんだよ」とその高校生は穏やかに言いました。母はそれを聞いて黙り込みました。(どうしたのかな?)と思っていると、突然、母が手を打ちました。

  

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