ビビらせる前に、(どうしてお巡りさんは誠くんを疑ったのだろう……)と彼を観察していました。

(誠くんは身長は高いし、金色のネックレス……お兄ちゃんのお下がりだろうけど、ブランドもののTシャツをオシャレに着こなしている。お巡りさんも、先月までランドセルを背負っていた小学生だとは思わないから、職務質問したんだわ……)と思いました。

誠くんは、(僕は悪くないよね?)と言いたげな表情で私を見つめています。

私はゆっくり首を横に振りました。

「腰に警棒ぶら下げているお巡りさんが、突然そんな腹の立つ言い方をするなんて失礼だよね、誠くん」

「うん」と誠くんが悔しそうに頷きました。私も話しながら段々興奮してきました。

「そう考えると、不良少年はお巡りさんが作っていると言っても過言ではないわ」すると母が慌てて口を挟んできました。

「ヨーコ! お巡りさんだって一生懸命やっているんだから、そんな偏った考え方はよくないよ」

「だって、お母さん。誠くんはまだ十二歳だよ~。お巡りさんだって、『キミはいくつ?』から質問しないとね」

「そりゃあそうだけど……だからって、お巡りさんが不良を作るなんてアンタの思い込みはよくないわよ」

「お母さんはどっちの味方なのよ!」

「敵とか味方とかの話じゃないでしょ……」

母娘ゲンカが始まると、誠くんは少し冷静になったようです。