前に行く力をせき止めることで、その分前に行く力を蓄積することもできます。そして右肩が開くことはありませんので、力を別方向に分散することなく、そのまま一気に、前に力をはき出してボールを「リリース」することができます。
前に進む推進力が損なわれず、一気に前に出るので、右足が接地するまでの歩幅、距離を稼ぐことができ、バッターにより近いところで ボールを「リリース」することができます。
「ピッチャープレート」からホームベースまで18・44mですが、左投手であれば右足、右投手であれば左足が接地した地点がホームベースから17・6mとすると、145km/hのボールを投げた場合、初速だけの本当の単純計算で恐縮ですが、ボールがホームベースに到達するまでの時間は0・437秒となります。岩崎投手の投げ方は、ステップするまでの距離を稼ぐことができます。
ホームベースから17・0mのところから先ほどと同じ球速の145km/hで投げたとすると0・422秒で、ボールはホームベースに到達することになります。つまり0・015秒短縮することができます。
これだけだとその凄さがわかりにくいと思います。2番目の仮定では、ホームベースまでの到達時間0・422秒でしたので、最初の仮定と同じく、ホームベースからの距離17・6mから0・422秒でホームベースにボールを到達させようとした場合、どのくらいの球速で投げる必要があるでしょうか。単純計算ですが、150・1km/hです。
ステップ距離を長く取り、ホームベースまでの距離を縮めることで、145km/hの球速でも150km/hの球速に仕立て上げることができます。岩崎投手の場合も、バッターの体感速度は球速以上の速さを感じることになります。
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