五章 なぜ彼らは帰らない
まず一階から案内を始める。玄関から真っすぐ伸びた廊下の突き当りにはエマが使用した大浴場とトイレがある。大浴場までの通りには左右に二つずつ部屋がある。玄関から見て左手前の部屋が、さっきまで皆がいた居間である。
左奥はステファニーたちが料理したキッチン、右手前は寝室、右奥がクローゼットだ。だが皆には案内するほどの面白みもないだろうから案内しなくていいだろう。大きい家を買ったものの、生活様式はたいして変わっていない。
次に三部屋ある二階へと案内した。一つは、今朝までそこで寝ていた俺の部屋だ。部屋には、趣味を見つけるためにいろいろと試したガラクタばかり収納されている。残りの二つは将来生まれてくる子供部屋と決めている。皆には先に子供部屋を案内した。
「子供がいないのに既に子供部屋として完成されているわ。気持ちだけが先走っているのね」ついでにヘラからインテリアの配置も批判された。
「子供はいろんなものを欲しがるけど、結局は親からの愛情を一番欲しがるからな」と俺は強がってしまった。
ところがマリッサがいい返してきた。
「そうかしら、うちの親はやることなすこと否定していたのよ。愛されたくもないし、愛されてもないわ」
「厳しくされてきたのも愛されていたからじゃないのかな」ライトは当たり前で正しいことを述べた。
「そもそもマリッサとエマは非行に走っていたのに、成績もそれなりに上位だったのはお互いの両親がエリートだったからだろうな」更生してからの挽回が驚異的だったのは、辛抱強く教養を子供にたたき込んだお互いの両親のおかげでもあるのだろう。
そしてガラクタばかり収納されている、のこり一つの部屋に案内した。