8. 血糖値を下げる唯一のホルモン、インスリン

M: 血糖値を下げるホルモンはインスリン1つしかないとお話ししてきましたが、インスリンってどの臓器が分泌しているか知っていますか? 

A: 肝臓が色々な代謝に関わっていると習ったので、肝臓……でしょうか? 

M: 残念。あきさんの言うとおり、肝臓は糖、蛋白、脂質の代謝に大きく関わっている重要な臓器であるのには間違いありませんが、インスリンを分泌する臓器は「膵臓」です。

A: 膵臓……、言われてみれば解剖学か生理学で習った気がします! 

M: 膵臓は胃の奥にある臓器で、場所としてはみぞおちの奥といった感じです。血液中のブドウ糖濃度が高くなると、膵臓からインスリンが分泌される仕組みです(図4)。

A: 図の上が血糖値、下がインスリンとなっていますがグラフの形が似ていますね。

M: 良いところに気がつきましたね。健常人では、血糖値とインスリンの変動が似ているのが1つの特徴です。もう1つの特徴は、インスリンの分泌はとても素早いということです。

A: 図4を見ると、血糖値が高くなるとインスリンも素早く分泌されているのが分かります。

M: 例えば、あきさんが糖質を含むお菓子をパクっと食べると数分で血糖値が上がり始めるのですが、膵臓は血糖値が上がってきたことを素早く感知し、インスリンを瞬時に分泌させて血糖値を下げます。

A: それで血糖値とインスリンのグラフは形が似ているのですね! それだけ、私たちの体にとって、血糖値はできるだけ早く抑え込む必要性があるということですね。

M: とても良い意見です。血糖値が高くなり過ぎると血管が傷ついてしまい、動脈硬化をはじめとした様々な合併症が起こります。ブドウ糖は体にとってガソリンのような重要な栄養源ですが、濃度が高過ぎると体を傷つける諸刃の剣なのです。そのため、血液中のブドウ糖が過剰にならないようにインスリンで速やかに調節しているわけですね。

A: 人間の体ってよくできていますね! 

9. インスリンの作用

A: インスリンが血糖値を下げるホルモンであることはよく理解できましたが、他にも何か役割があるのでしょうか? 

M: インスリンは、血糖値を下げる以外にも様々な生理作用を持っています(図5)。その中で特に知っておいてほしいのは、インスリンは糖を脂肪に変える「強力な肥満ホルモン」だということです。

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