そうだ、今日満里奈と会う約束をしてたんだったと、部屋着に着替えながらぼんやりと思った。満里奈は僕の好きなチーズインハンバーグを作ってくれていて、なんで? と聞くと、最近なんか元気なさそうだからと答えた。

やっぱり良い女だな。僕は心の底から思った。

相変わらず満里奈の作るチーズインハンバーグは世界一美味しかった。僕が美味しい、美味しい。と一気に平らげると、満里奈も子供みたい、と笑い、幸せな時間が流れていた……のだが、僕はふと気になってしまった。

「不倫してた先生にも作ったことあるの? チーズインハンバーグ」

聞かなくていいことを聞いたと瞬時に後悔したし、あれだけ幸せな二人の空間に一瞬で亀裂が走ったのも感じた。

でも気になったのだ。満里奈の家でいつも会ってたなら、手料理も勿論振舞っていたはずだ。満里奈の顔はもう見れなかった。

「……チーズインハンバーグは作ったことはないよ……」

満里奈がそう答えると、沈黙が生まれた。

それが本当かは分からないが、「は」ってことは、手料理は振舞ってたんだなーと思った。

スマホを手に取り、今日はどの子にしようかと考える。妻には今日は仕事で遅くなると伝えているので大丈夫。ここからは大人の自由時間だ。

三人、教え子とは関係を持っているが、今日はその中で満里奈を選ぶ。満里奈の家に着くと、夕食を作って待っていてくれた。

「急に来るって言うから……大したものは用意できなかったけど」

そう言いながらも食卓には十分すぎるほど立派な料理が並ぶ。まだ若いのに立派な子だ。美味しそうに食べると、満里奈も喜ぶ。あっという間に平らげた。

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次回更新は1月9日(木)、18時の予定です。

 

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