僕は至って真剣だった。こんな相談したら、今後の大学生活舐められるかもしれないが、今はそれどこじゃなかった。
僕の大学デビュー計画にセックスは切っても切れない関係だ。せっかく機会は得たのに、こんなつまずき方をするなんて思いもよらなかった
「そんなもん無心になればええねん。余計なこと考えんとエロいことだけに集中して腰を振る。そしたら中折れもせえへんし」
「いや、中折れとかの前に挿れられないんだって! チンコだけもう死んでたんだよ!」
僕が泣きそうな声を出すと、隆志が笑った。隆志も村崎も新一郎の家に来ていて、さっきまで三人で麻雀をしていたらしい。
隆志はイキった話や自慢話なんかは笑わないが、人の情けない話やダサい話のときはよく笑う。僕の中学の時のアリエルの話も一番腹を抱えて笑ったのは隆志だった。
絶賛童貞中の村崎は、そんな状況で勃たないことあるんだーみたいな不思議そうな顔をしていた。
「俺も初めての時はそんなんだったよ」
「えっ、隆志も?」
「うん、みんなそんなもんだろ」
あの隆志もそうだったと思うと少し安心した。
「オレは最初からビンビンやったけどなー、よっしゃ、じゃあオレが最悪勃たなくても、女イカせられるように実演指導したる」
新一郎はそういうと、村崎をベットに押し倒した。
「よう、見とき」
「おい、やめろー!」
新一郎が村崎の服を脱がしだしたので、僕は笑った。さっきまでの情けない絶望的な気持ちが晴れていく。
スマホを見ると、亜里沙からメッセージが届いていた。
「さっきはなんか可愛かったよ! また今度ね♡」
あんな情けない姿を見せたので亜里沙とはもうないだろうなーと思っていたから、ビックリした。
「またリベンジさせてください!」
僕は素直にそう返した。
その後、亜里沙の家には三回ほど行った。
またそういうエロい空気になったが、そのうち二回はまた勃たなかった。亜里沙も色々と協力してくれたが、それが逆にプレッシャーにもなってダメだった。
でも諦めかけてた三回目。もうここまで駄目で情けない姿を見せてたらどうなってもいいやと開き直れたのか、さすがに緊張も解けてきたのか、それとも直前にダメ元で飲んだマムシドリンクが効いたのか、僕は無事セックスをすることができた。
一度できたら今までのがなんだったんだろうというくらい、またすぐ勃ちタガが外れたように朝まで何回もした。亜里沙もあれだけ真面目に行ってた朝サーフィンをへとへとで休んだ。
童貞を捨てた朝帰りの、あの無敵感と爽快感。なんてことのないいつもの朝の風景が光り輝いていた。ただ、自分が全く別の自分に生まれ変わった気持ちと共に、なんだこんなものだったのかーという舐めた気持ちも生まれている。
【前回の記事を読む】ヤンキーへの復讐も、本物の強さもどうでもいい。なぜならこの"大学デビュー天下取り物語"は、僕の恋愛に関する物語でもあるからだ。
次回更新は12月29日(日)、18時の予定です。
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