「フレッシュな力でやって」とアケミさん。Nさんのベッドから二人の見習い看護師の会話が聞こえてくる。

「そんなこと言っても、二つしか違わないじゃない。先輩の持久力でやって」

「体格で決めないでよぉー」

カーテンの向こう側で頬を膨らませているのが想像できた。アケミさんの方が確かに背も高くて、髪も短くしているだけに、ちゃきちゃきの跳ね返りの気の強さを持っているように見えた。

「それなら、ここで疲れた分、ランチおごりで、リフレッシュさせくれる?」

「いいよ。明日の給料日でカードの中、リフレッシュさせるから。頑張れ、エミちゃん」

「アケミさん、ちょっとだけ手伝って!」

「リフレッシュ、五百六十円の定食にまけてくれる?」

「いいよ。もう、もたない。早くして」

「Nちゃん、今まで横すわり簡単にできたじゃん。体重増えてないよねぇ。あぁあ、やっぱり、足、ベッドの脇に引っ掛けてる」

「もう私、だめかもしれない。Nちゃんに心を折られちゃったよ」

「Nちゃん、ニタニタしてる」

「いい? そのまま起きてテレビ見ててね。三十分したら、来るからね。Nちゃん笑ってないでお願い。起きているのよ」

ワ抜けコンビの二人はそう言うと出ていったようだった。Nさんのニタニタした顔を見たいと思って、こちらのカーテンからのぞいても、いつも通り、ぴっちりと閉まっていた。病室に癒しの輝きをまき散らす気持ちよい二人のつむじ風が去っていった。