ALS
本当にいいのだろうか? なすすべがなくなって、諦めて時間が過ぎ去っただけで、妻の自宅介護に対して考えつくしていないのではないか? 妻のベッドの横で考え始めた。
『将来、自問自答した時に、胸を張って全力を尽くしたと言えるように、今を京子に捧げる』
あの決心に恥じないか。改めて京子の痒い所、痛い所に、直ぐに手が届くように寄り添って、応えてやりたい。そう思ったときに、ふとひらめいた。
『そうか、これから付き添いの時間を出来るだけ長くして、京子の要望をより多く拾ってやることができればいいのだ』
一日中病院で介助できれば、家で看ているのと同じになる。やっと、喉に引っかかっていた小骨が取れて、すっきりと前に動き始めた。『なるようにしかならない』から、『なるようになった』に変わったと思った。
むしろ自分の発想の乏しさで、どうしようもないことばかり考えていることが多い。私は、自分の考えが後ろ向きの結論にならなくてよかったと思った。おそるおそる京子を見ると、ニコニコしながら、私とは関係のないことに耳をすませていた。