「それって、忙しさにかまけた看護師が、図々しくなってるだけじゃないの」と嫌味を言った。
そう言った後で、この病院に転院してきた頃のことが、私の頭をよぎった。当初、患者に買ってこさせた紙おむつを、病院が使用していた。ところが、水分の吸収率が優れたものがあるということで、病院側が外国製のものへと変更しようとしていた。
病院側の紙おむつの導入の同意書の内容を詳しく読むことなく、受け取ってすぐに私はサインをして渡した。すると、看護師は言った。
「三~四回までのおしっこは、これだと漏れる心配がなくなります。これで、おむつ代が安くなる方もいらっしゃいます」
それまでは、患者がてんでんばらばらにナースコールを押して、その都度、汚物を処理してもらっていた。新しいやり方では、同じおむつの中に、数回も排尿することになる。看護師の言葉で初めてそのことに気付いて不潔さを感じた。
女性看護師の言葉は、患者第一主義で推し進めているのだと、これ見よがしに言っているように私には思えた。そのことが、ひどく気に障った。天邪鬼な私には、逆に病院の合理化と言われたほうが、すんなりと受け入れられたかもしれない。
転院したばかりで病院の制度がよく飲み込めていない時期でもあり、矢継ぎ早に、いろいろな入院に関する書類の提出を迫られていた。いちいち気にかけている暇がなく、承諾のサインをしてしまったが、今、思い出しても腹立たしい。その時も、最後の抵抗でわざと返事を返さなかった。
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次回更新は12月22日(日)、21時の予定です。
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