第三章 京都で剣士になる
そんな美しい時間を破るように友が言い放つ。
「さあぁー、帰って温泉入ろう」
歩き出した友に向かって皆が、
「賛成!」と言い、
「ソフトクリーム食べながら帰ろ」と言う私。
「賛成~」と異口同音に言う。
ソフトで手をべとつかせながら宿に着き、温泉に入ると旅館が用意してくれた取り取りの浴衣に着替える。
殿は履いていた袴がいいと言い、浴衣だけは着替える。
それぞれに身支度がすむと、夕食は花火を見て帰って来てからにすると言う事になり出掛けた。
そぞろ歩く感じで行こうと外に出ると、日が沈んだと言うのに明るい。それでもそこここの角(かど)に薄闇が落ちている。
橋の上で花火を見ようとワイワイ言いながら歩いていると、後ろから来ていた部活帰りらしい高校生が嫌な顔をしているので、やり過ごすまで少し静かにしていると、
「京都観光、いいご身分だねぇ。女の子沢山引き連れて! こっちは休みでも部活で遅くなっているっていうのに!」と言いがかりをつけながら、すれ違いざまに殿を取り囲む。
すると、殿の行動が素早い。タマを下に置くと近くにあった短いがそれなりに太い枝を掴み低く構えた。と思うが速く突いていった。相手は思わぬこちらの出方に驚いているようで、少しからかっただけのつもりが、それでも殿の反応の仕方に自分たちも持っていた竹刀を遅ればせながら構えた。
剣道部みたいだ。