「ご存知かわかりませんが、保険には免責期間というものがあって、保険に入ってから90 日間は仮に被保険者が死亡しても、保険金が1円も支払われない場合があるんです。
今回が免責に該当するのか私には良くわかりませんが、汐里ちゃんはいずれにしても免責期間を過ぎてから亡くなったので、その双子の方に保険金も満額下りましたし、不謹慎な言い方かもしれないけど、ある意味保険を誘っておいて良かったな〜とは思いました。支払い保険金が高額で、会社が大変だったとしても、私たち外交員には関係ないですし」
そう言うと有島は、カフェオレをすすりながらポツリとつぶやいた。
「プーでヒッキーな私がここに来たのも、汐里ちゃんに恩返しと思ってです」
有島のことを案外良い子だなと思いながらも、間髪入れず鍛冶内は次の要件に取り掛かった。
「さて、それで……電話でお願いしてたものを、持ってきていただけましたか?」
「ああ、はい、これですね……?」
と言いながら有島が取り出したのは、高校卒業時にもらう卒業アルバムだった。
「汐里ちゃんと有島さんがいたクラスは……」
「3年4組です」
有島が馴れた手つきでアルバムをパラパラとめくった後、自分のクラスのページをすぐに探し当てて、鍛冶内に見せた。保険の勧誘で何度も開いてきたのだろう。ひとクラス40 人ほどの顔写真の羅列が、すぐに鍛冶内の目に飛び込んできた。
……おそらくこのクラスの男子の中に、汐里の彼氏がいるはずなんだ……。
「汐里ちゃんが、クラス内の誰かと付き合ってたって話、聞いたことない?」有島はしばらく考えていたが、最後に首を振った。
「じゃこの中の男子で、牡牛座の人は何人いますか……?」
「ああ、それなら簡単にわかりますよ」