人生の晩期に適した住まいとは

人生の晩期を支える住宅を作るにあたって、高齢者の心の変化を考えなくてはなりません。一般に高齢者は4つの大きな喪失感を味わい、心が萎えていきます。

『4つの喪失とは「身体、精神の強さ、健康の喪失」「家族や社会とのつながりの喪失」「経済力の喪失」「生きがいの喪失」とされ、老年になるほど、健康は徐々に失われ、子供達は手を離れ、配偶者や友人を失っていきます。

仕事を退職し、社会的な役職や地位を失い、社会とのつながりが希薄になっていきます。お金の心配も不安の種です。人との付き合いも減りがちとなり、活動範囲も狭まっていきます。これらが複合的に重なり、高齢者は自らの役割を失い、生きがいを失って行きます。』注1)

『これらの環境の変化のもたらす不安が個人の本来の性格に加えて、高齢者特有の性格の変化となって表れます。不安の表れとして、落ち着きがなくなったり、鬱々としたり、寂しがり、不平不満が多い、頑固になるなどの変化が表れます。

また、毎日、仕事や、するべきことがあるわけでもなく、世間の流行にもついていけず、仔細なことから孤立感や疎外感を感じます。さらに日々加速する身体的な衰えによって、体の自由が利かなくなると、何もやる気が出なくなり、生きている目的が見出せなくなることもあります。

さらには病気をすると、何でも死に結び付けて考え、全てにおいて無気力になってしまうこともあります。「自分はもう生きている価値がない、人様に迷惑をかけるだけ」など自尊心を傷つけ、塞ぎこむこともあります。

たとえ病気や障害があっても、毎日充実した晩年を過ごせるよう、長い人生経験を生かして、住宅や地域社会でその人なりの「役割」を何か持つことが必要です。』注2)