七月五日<坂本城>
秀満
「殿! 何とも巨大な大安宅船(あたけぶね)がやってきました! 全長三十間、左右の舳先から百挺もあろうかと思われる櫓が波を蹴立てて進んで参りました。おー! 舳先に信長様がマントなるものを翻して立っておられます」
信長
「光秀、大儀」
光秀
「上様! お待ちしておりました。しかしまあ、これはまた思いも及ばぬ巨船にて、城兵が皆ビックリしておりまする」
信長
「これが儂の自慢の大安宅船だ。驚いたか」
光秀
「ははっ! 誠に驚きました」
⇒まっこと、初めて見る巨船じゃ。これを見て公方様は度肝をぬかし、戦意を失われるであろう。この戦、もはや勝ったも同然で、織田家にも儂にとっても新しい時代の船出となるな……。
勝家
「誠にこの巨大な船は山のようで、しかも少しも揺れない。こんなに巨大な船は見たこともござらん。驚き申した。これを見たら公方様も腰を抜かして驚くでありましょうぞ!」
信長
「ははは、左様か。さもありなん! 直ちに兵たちを乗船させよ! このまま湖を渡り京に進撃し、まずは幕臣達が籠る烏丸中御門第を取り巻き攻撃する! 直ちに出港せよ!」
秀吉
⇒ヒエーすごい船じゃ。まるで湖に浮かぶ城のようじゃ! 少しも揺れない! 驚いたのは、左右のへりから百挺もの櫓が飛び出しており、それが水を掻く様は誠に勇壮じゃあ!
儂は、光秀の城よりこの船の方が良い。いずれ儂は、光秀の城よりもっと大きな立派なものを築城してみせる。それより、上様はこの船を百艘も造って明国まで攻め取ると話されておる。誠に壮大な夢のような話ではないか!
光秀
「上様、もう対岸に着き申した! これだけの軍勢を乗せてもビクともしません!」
信長
「うむ、驚いたか。それ皆の者、一斉に下船し二条城を一気に攻め落とすぞ。相手が誰でも容赦は要らぬ。者共かかれ!」
全軍
「ワー! 突撃だー!」