「いろいろと考えてきました。僕が考えてきたことをたたき台として皆で議論しましょう。まず、僕にとって車は、いつでもどこでも好きなところに行けるという自由そのものです。そんな気持ちを特に若い人に伝えたいです。

車の好みや車に対する考え方はいろいろです。車が自分のアイデンティティである人もいれば、単に安全に走る安い車が手に入ればいいと思う人もいます。でも皆さん気持ちよく購入したいと思うはずです。それなのに、この営業所の中には冴えない長机があるだけでパッとしません。まず、ここから変えましょう」

「確かにおっしゃる通りです」

城間さんの反応に対して僕は続けた。

「皆で掃除して綺麗にして、洒落た机を購入するのもいいと思うし、壁を明るく塗るのもいいでしょう。それから壁は単に綺麗にするだけではなく、お客さんが撮った車関連の写真を貼る場所を作りましょう。そして一番いい写真を選んで毎月表彰しましょう」皆、顔を見合わせている。変なこと言うと思われているのかな。

「次に、これから進めたいと思っている企画について話す前に、一つ皆さんに報告があります。城間さんの後任が昨夜決まりました」

僕が皆にそう伝えると平良君が質問した。

「仕事が早いですね。どんな人ですか?」

「東京で中古車を売っているセールスマンの亀井君です。20代の若手で、5年前の夏に僕がこの人からシビックのTYPE‌Rを購入したという繋がりです。

亀井君は、車のことをよく知っているうえに相手の考えていることを予測することに長けており、戦力になるでしょう。8月の終わりくらいには沖縄に来てくれるそうです。城間さん、それまでの業務と亀井君への引き継ぎお願いします」

「了解しました。仕事が早くて驚きました」

「いえいえ、たまたま運がよかっただけです。城間さんほどではないかもしれませんが、強力な助っ人が決まって良かったです。城間さんが抜ける大きな穴を埋めるために、もう一人若手の人を探そうと思います」

後任がすぐに決まったことについては、失礼がないように気をつけて話した。自分から辞めると言ったとしても、1日で後任が決まったことで、あまりいい気はしないだろう。

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次回更新は12月26日(木)、8時の予定です。

 

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