とりあえず次の日取りを決め撤収。惨敗。見事にしてやられた享子の攻撃、必殺技「面会拒否!」トシカツ艦隊は謎の反転のまま、ふらふらにやられてしまったのである。

ことごとく享子の予想外の行動にトシカツは翻弄される。まぁ対立の始まりが予想外、想定外から始まっているのだからそうなるのだろうね。

なぜか享子はトシカツの想定の中にない行動ばかりとる。運命の流れなのか? 享子の賢い計算なのか? 性格なのか? ワザとなのか? やはり相性のズレか? 

「人生は沢山の坂に出会います、上り坂下り坂、いろいろな坂がありますが、一番怖いのが、ま坂という坂です」なんて聞いたことがあるけど、トシカツにとってそのまさかの連続である。

エンドレスジェットコースター! ノンストップ! まさかの家出、まさかの享子の浮気発覚、まさかの警察介入からの、会える、話し合えると期待の家裁の面会も、まさかの面会拒否。

トシカツにとっては予測も想像も選択肢もなく、そして心の準備をする間もなく、守りの堀も塀も楯も鎧も兜もない。防護服もマスクも着ける間もなく戦場に突き出されることばかりだ。

将棋で喩えるとトシカツは次の手を考えて動いても、享子は5手先で勝負してくるから勝てるわけがない。しかもお互いのモチベーションの違いが大きすぎる。雲泥の差である。

恋する女は恐ろしい。享子はもう失うものは何もない、なり振りかまわず全身全霊で体当たりしてくる。完全に自分の過失(不倫)を責められないように、完全防御しながらトシカツの攻撃を受けて立つ。享子にとってトシカツは憎き敵である。

そりゃそうだ、老いらくの恋とまでは言わないが47歳、今まで苦労してきた子育てにも目途が付き、そこに現れた人生最後の恋。

心の中に咲いたお花畑を、トシカツに土足のままグチャグチャに荒らされたのだから憎んでも憎みきれない相手なのだ。世間では享子の逆恨みとも取れるけど。

ところがトシカツは享子に戻ってきてほしくて戦っている。享子の心がトシカツに帰ってくるのがトシカツにとって終着駅なのだ。だけど享子の心の中にはそんな駅など、まるっきりない。トシカツは駅のない線路をひたすら走り続けるのである。

【前回の記事を読む】しばらく会っていない妻に会えるし話もできる! ワクワクして調停室に入るとまさかの「面会拒否?」

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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