大阪編
暗転
大晦日の日に自宅に帰った僕を大輝は満面の笑みで迎えてくれた。その後ろに不安そうな顔をした琴音がいた。大輝の元気そうな顔を見て少しだけ僕の心が軽くなったが、翌日からの正月三ヶ日のことを考えるとすぐに暗澹たる気分になった。
琴音の両親や兄弟、僕の両親には元日か2日に挨拶に行き、2日には初詣に行かないといけない。4日の仕事始めには本社に寄って山上所長に挨拶に行くことになっている。会社への挨拶の方が少し気楽だというのが悲しい。とにかく頑張って3日間の行事をなんとかこなした。
4日の朝に大阪空港行きの飛行機に乗る前に京橋にある本社に立ち寄るために自宅を出たときには、ようやく解放されたと思って気分が楽になった。
疲れるために帰ってきたようなものだが、努力したにもかかわらず、帰省中も元気がない僕の様子で琴音の心配をさらに大きくしてしまった。大輝とはできる限り一緒にいて遊んでやった。その時間だけは少し気持ちが楽になった。
東京から戻り、吹田営業所が営業を開始して1週間が経った。やはり全く意欲が湧かず、食欲も落ち、夜眠れない日が多くなってきた。
コンビニの弁当ばかりでは飽きがくるけれど、外食する気にもなれず、かといって自分で作ってみようという気にはとてもなれない。どうせ仕事をする気がしないなら早めに退社して美味しいものでも食べて、という気にもなれない。
結局、ダラダラと営業所で時間を潰して、コンビニで弁当を買ってアパートの部屋に帰って、一人で食べることの繰り返しだった。