亡くなった主人が私の心の中で大きくなり続けたせいでそれ以後お付き合いしようとした男性と主人をどうしても比べてしまって、必ず亡くなった主人の方が上だとしか思えなくて、妥協してまで結婚しなくていいという自分が変えられなかった……そして今に至っているという訳」と正直に胸の内を明かした。その上で
「今度は私が質問する番よ。奨学金返済の為、海上自衛官を希望したと言っていたけど、どれくらい海上の方が陸や空よりもいいの?」と質すと
「海上自衛隊員には、陸や空にはない乗組員手当と航海手当があり、他に航海中は洋上という特殊な環境となる為、基本給が一・五倍近く支給されます。仮に自衛官の基本給が一〇万円なら海自だと一五万円貰えるんです。その他に航海手当、乗組員手当が付く訳なので手っ取り早く稼ぐなら断然、海自なのです」と詳細に教えてくれた。
「それで四年間で六〇〇万円あった奨学金を完済できた訳だ」と桜田が言うと
「奨学金を完済しただけではなく、結婚資金も四〇〇万円ほど貯め込んでいましたよ。自衛隊は基本的に衣食住が無償で提供されるのでほぼ生活費が掛かりません。
私は車も所有していませんでしたから、自己負担していたのはせいぜいスマホ代くらいで、格安スマホを使っていたので月々数千円程度でした。だから四年間で一、〇〇〇万円以上を貯めた事になります」と節約の秘訣を語ってくれた。その上で最も核心に迫る問をしてきた。
「警部さんは、私に任期制の話をさせて何をされようとしておられるのですか?」と質したのだ。