そして近年、女性刑務官の負担となっている事に摂食障害やうつ病、適応障害といった収容する先が違うのでは?と思える収容者が増えていた事も離職の一因と思われていた。

そんな中で女性刑務官が人並みに結婚して出産すると、子育てと女性刑務官を両立させる事に悩み、離職するケースが後を絶たない事を知った。

ごく最近の資料によると女性刑務官として採用されてから三年以内の離職率は三八%で、男性刑務官のおよそ三倍。公務員の平均離職率が五%程とされているので異常に高い離職率との事であった。

「うーん、何とかしないとますます起訴してもらえなくなりそうだわ」と思わず口にしていた。

そして桜田は「そうだ! 出産した女性刑務官には三年か五年が選択できる育児休暇を与えて、この間を任期制の刑務官でカバーする働き方改革を実行すればいいんだ。これなら双方にメリットがあるわ」と女性としての視点から閃いた改革案を独り呟いた。

桜田は、自身が女性自衛官だった経験を活かし独自のルートで自衛隊の任期制の処遇条件を調べ上げ、女性刑務官の出産時への対応策を練る事にした。

その一環として、かつて桜田が籍を置いた自衛隊時代からの旧友でもある現女性自衛官、如月陽子に協力を依頼しようと思い立った。

「警子何? 会って色々と教えてほしい事があるって?」と如月は会うなり問い質した。

「うん、急に呼び出したりしてごめん、でも貴方が今千葉地方協力本部勤務だと年賀状見て、打って付けだと思ったのよ」と言ったところで

「何が打って付けなの? 今は自衛官募集の広報官だよ、私」と現在は広報官として仕事していると告げた。

「だから、打って付けなの。広報官って自衛隊員の処遇に関しては熟知しているでしょ?」

と質すと

「そりゃまあね、野原で小銃射撃したり、海の上で領海監視したり、潜水艦がいないか警戒活動している人達よりはね」とふざけながら答えた。

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次回更新は11月28日(木)、8時の予定です。

 

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