第三のオンナ、

千春

学校でいじめに遭っていた亡き姉は、孤独だったに違いない。だからまゆ実にも筆舌に尽くしがたい寂しさを味わってもらう必要がある。

単純に彼女の悪評をネットに広めればいいのかもしれないが、ネットはうまくやらないと、しっぺ返しがくるような気がしてならない。わたしの仕業だとすぐに特定されるだろう。九十九はるかが死亡したというフェイクニュースのようにはいかない。あれは、まゆ実一人を騙すことができればよかったのだから。

下衆なITエンジニアにもう一度相談してみようか。そう考えたが、やめた。文字通り下衆な男で、また胸を触らせてやらなければならないかと思うとうんざりする。いや、今度はどんな要求をされるかわからない。スタスタグラムは後回しにしよう。まゆ実と貴輝を、きっぱりと別れさせることさえできれば充分かもしれない。まゆ実はかなりのダメージを受けるはずだ。

「おーい」

父の呼ぶ声。

「晩飯まだかー」

時刻を確認すると夜の八時だった。父の存在をすっかり忘れていた。ぎっくり腰が完治しないから今夜の仕事を休むんだっけ。わたしは自室を出てキッチンに向かった。冷蔵庫にあるものでチャチャッとチャーハンを作る。キャベツ・玉子・ウインナーと一緒に炒めだけの、お手軽チャーハンだ。

父は居間で座椅子に座り、テレビ番組を見ている。

「はい、どうぞ」

わたしはちゃぶ台の上にできたてのチャーハンを置いた。父は「うむ」と言っただけで、無言で食べ始めた。わたしは何か文句を言われるのではないかと内心ひやひやしていたが、父はペロリと一気に皿をきれいにした。