第三のオンナ、

千春

すると、まゆ実はわたしのほうに顔を向けた。ヒッ、と表情をひきつらせていた。

キャンパス内でも金髪のあかねに変装してまゆ実を怖がらせようと思ったが、正門の前で引き返した。同期生に会う確率が高く、想定できない事態に巻き込まれるのを防ぐためだ。わたしは適当に時間を過ごし、夕方になるのを待った。

夕陽がまぶしい時刻になった。いつものまゆ実なら、何人かの友達と連れ立って繁華街へ繰り出すことが多いのだが、この日は一人だった。歩みが早いところを見ると、早々に家に帰りたいようである。

そんなまゆ実を見て、わたしは噴き出しそうになった。ドッペルゲンガーにまつわる伝説を信じていることは疑いようがないだろう。帰宅する前に、わたしはダメ押しがしたくなった。

まゆ実を尾行しながら、わたしは考えていた。どんなダメ押しをしようかと。目の前に現れるだけ、というのは面白くないのだ。

――三人めに会うと死ぬんです。

この言葉がわたしの脳裏をよぎると、まゆ実には死の恐怖を味わってもらおうと思った。

交通量が多い交差点。

まゆ実は信号待ちをしていた。あかねが気になるのだろう。道路にほど近いカーブ付近に立ち、きょろきょろと前方百八十度の範囲を見ていた。

むしろ、その立ち位置は好都合だった。わたしは背後から忍び足で近づき、まゆ実との距離を少しずつ縮めていく。

まゆ実はまったくわたしに気づく様子がない。

信号機は待ち時間が表示されるタイプで、わたしはいまかいまかとそのときを待っていた。

待ち時間を示す赤色のランプが、残り三つになった。