借金地獄アメリカの破壊
トランプの法人税の効果という話は本国送金による刺激策のデタラメよりひどいものだ。
新税制の意図しなかった結果として、アメリカ企業が新規投資を国内よりも国外でする誘因を創りだしてしまったことがある。
海外に留保された利益を本国へ持ち帰るにあたり、一度だけ低率税が課されるのと交換に、今後すべての海外での所得はアメリカで非課税になるという、アメリカ企業がこの50年間願っていたことが実現したのだ。
トランプの税制案の以前には、アメリカは国際的に活動する企業に対しその全世界での利益に課税していた。ただ、即時か、かなり詳細な条件のもとで、本国送金時の課税かを企業側が選択できることになっていた。
今やアメリカは国内所得のみ課税することになり、海外の所得は対象から外された。この税制の支持者はアメリカの法人税率が35パーセントから22パーセントに引き下げられたのは、企業に国内で投資させるためだという。
しかし、22パーセントでもゼロより高い。企業が税率ゼロのタックスへーブン地域を見つけることができる限り、彼らはアメリカよりそこで投資を考えるだろう。
アメリカは今では海外の利益について即時でもあるいは繰り延べベースでも課税する方法を失ってしまった。利益とそれに関連する仕事は永遠に外国に残ってしまった。
トランプのアドバイザーらは債務危機は平均より高い経済成長により避けることができると主張する。これは数字の上では可能かもしれないが、あり得ないと思われる。
債務の対GDP比率は2つの要素から成る。分子が名目債務で、分母が名目GDPだ。数学的には分母が分子より早く大きくなれば、債務比率は下がっていく。
トランプチームは年間の名目赤字がGDPの3パーセントで、名目GDPが、4パーセントの実質成長率と2パーセントのインフレから構成される6パーセントでの成長を期待している。
もしこれが実現すれば、債務の対GDP比率は下がり、危機は回避されるだろう。この予測は信じがたい。赤字は議会予算局(CBO)によると、すでに5パーセントに近づいていて、年内には更に高くなると予想している。
このCBOの予想は今後20年間に景気後退がないという前提で見積もっていることもあり、楽観的であることは確かだ。現在の景気拡大がすでに第二次世界大戦後2番目に長いものであることを考慮するとこの予想値は事実上あり得ない。
景気拡大は年月を経て衰えてなくなるものではないが、永遠に続かないことは確かだ。もしこの3年以内に不況が始まれば─あり得るシナリオではあるが─自動的な安定装置による支出と緩慢な経済成長による税収の減少により何千億ドルの赤字が追加されることになる。
新しい不況は成長を引き下げ、同時に赤字を膨らませるだろう。不況がないとしても、CBOは2019年度は2.4パーセントの実質成長と2.1パーセントのコアなインフレを公式の予測として公表している。
これによれば名目4.5パーセントの経済成長になるが、これでは5パーセントの赤字予想には足りないことになる。債務の対GDP比率はCBOのバラ色のシナリオのもとでさえ、上昇するのだ。