カーターは目前のハイパーインフレの恐れに制限を受けた財政保守派であった。クリントンは債券自警団と1994年以後共和党が多数を占める下院の制限を受けた穏健派であった。

進歩派はジョンソンの偉大な社会(1965)とそれ以前のルーズベルトの最初の100日間(1933)に立ち返り、進歩派が歴代求めていた政府活動を知る必要があった。

歴史に残る社会福祉とメディケアの制度はルーズベルトとジョンソンの時代に可決された。オバマが大統領に就任した時には40年間これらに匹敵する重要な社会制度的法律の制定はなかった。進歩派は社会福祉支出を待ち望んでいた。

オバマは彼らが期待する進歩派リーダーだった。

オバマは方針をいちいち確認するまでもなく進歩派がやりたいことを実行するための出来合いの政策を準備していた。2008年の世界的金融危機は経済を破壊し、失業率はうなぎ登りだった。

ホワイトハウスの経済チームは、クリスティーナ・ロマー、ラリー・サマーズ、オースティン・グールスビー、スティーブ・ラトナーのメンバーでラジカル進歩派ではなかった。

彼らは伝統的なネオ・ケインジアンであった。彼らの解決法は予測通りの巨額の赤字を伴う支出で経済に刺激を与える政策だった。刺激はケインズ学者の言う象徴的な乗数から生じる。クリスティーナ・ロマーの予測値では1ドルの赤字を伴う支出で、1.5ドル以上の経済成長がもたらされる。

後はオバマとその親しい政治アドバイザー、バレリー・ジャレットに任され、進歩派の求める政策一覧とネオ・ケインジアンの景気刺激策を混ぜ合わせて、2009年アメリカ復興・再投資法という法案が成立した。

これは事前に承認されていた基本的支出と不況時に生じる失業保険やフードスタンプなど自動的な景気安定政策の双方に、更に上乗せされた8,310億ドルの赤字支出パッケージだった。

2009年の景気刺激策はインフラ整備のためにすぐにでも着工できる促進策として売り込まれた。これはラリー・サマーズがやった不正だった。ほんの一部だけが重要なインフラ事業や製造業の基盤関係にまわされた。