そんなときだった、覚えてるだろうか?
小栗旬主演の「クローズZERO」という映画。「クローズ」というヤンキー漫画を映画化した作品。それが、宮崎に上陸してきたのだ。
季節はもう冬くらいだったか。僕はF4の一人新一郎と、あと農学部の仲間何人かでそれを見に行った。
そのときの衝撃。
カッコいい! ヤンキーカッコいい!
スクリーンには所狭しと暴れ回るヤンキー達の姿。僕が中学のときに避けて進んできた道を生きている男達の生き様。僕は一瞬で心を掴まれた。
そして思い出した。中学生の頃、ヤンキーと付き合った僕の初恋の子。あの子がなぜ、ヤンキーに惚れたのか。その理由も少し分かった。
親元を離れて自由となった僕の前に、少しだけヤンキーの道が見えてきた。男だったら、一度もこういう生き方せずに死んでいいのか?
そうもう一人の自分が問いかける。
呆然状態で帰ってる途中、僕はポツリと呟いた。
「なんかケンカしてーなー」
今思えば最高にダサい発言だ。国立大の大学生の発言じゃない。
しかし、新一郎はそれに飛びついた。
「わかるわー。オレも久しぶりにしてー」
残りの一緒に見に行ってた仲間達も口々に言う。
「オレも」
「なんかケンカできそうなヤツ、おらんかなー」
そのとき、誰かがポツリと言った。
「あいつは? 工学部の金髪坊主」
確かに今ケンカするとしたら僕らの相手はあの工学部の一軍達だ。僕は宮崎大学を一つにしたい。完全な天下を取りたい。そうなれば潰す相手は決まっている。
「いいかもな」
みんなが口々にそう言う。
「クローズZERO」のおかけで、みんな完全にかかっていた。自分らが国立の大学生っていうことも全く忘れている。気分は、中学生だ。
「難癖つけて呼び出すか」
「そうしようぜ!」
みんな、思ったより乗り気だ。
【前回の記事を読む】「こ、今度みんなでコンパしない?」童貞だって絶対にバレないように、自然に誘う。ギャルに舐められるわけにはいかなかった。
次回更新は11月27日(水)、11時の予定です。