低く牽制するような声色で、思わずすくみ上る。声が裏返った喉を押さえながら、男性と目を合わそうと見上げるとなぜか雰囲気がますます剣呑になっていく。
「とりあえず席について」
先生に促されて自席に着いた。
「これでこのクラスは全員揃いました」
先生が男性に報告する。男性は鷹揚に頷いて教卓に両手をついた。体が前のめりになって威圧感が増した。
「遅刻者は、欠席予定だった月島君だけ。他にこのクラスで遅刻した人はいないということでよろしかったですね」
上から押さえつけるような圧力が掛っている。先生が代表して首肯した。
「そうです。登校してから皆一緒だったよな」
岩室先生がかばうように生徒を見渡した。
「ええ、そうでしょうね。先ほども皆さんに説明した通り、そもそも警察としても、朝、学校にいる時点で皆さんが今回の事件に関与しているとは考えていません。しかし殺人事故、自殺の全観点から調査が必要だと考えています。そのためにも先生の人柄や事件の背景について知る必要があり、皆さんから事情聴取をさせていただくのです。事情聴取と言っても形式的なものなので気負わないでいただいて結構です」