第三章

一年一組

秋吉のおかげでほぐれたとはいえ、緊張でぎこちなくなりながら、岩室先生と僕と刑事の三人が教室を出る。

「もしかしてこの学校の全員に話を聞いているんですか」

何とか口を開いた。

「まさか。関係が深そうな人たちだけだね。先に来ていた刑事たちは先生方にお話を伺っているから。後は先生が受け持っているクラス。部活動など。幸い野口さんは去年から先生をなさっているので、そこまで交友関係は広いわけではないから聞けるところは聞いていこうかと。まあ、このクラスには個別に話を聞かせてもらうことになりそうだけれどもね」

岩室先生は廊下に出たところで立ち止まり、窓越しに教室内の様子に気を配った。そして突き当りにある部屋で事情聴取をするように促す。昨日、宮園と樹先生が話し込んでいたあの部屋だった。僕は刑事とともにその部屋に入った。刑事にドアを閉められて、閉じ込められたように錯覚する。先生たちはそんなことをしないので余計に不安になる。

「ええと、そこにかけて」

椅子をすすめられた。刑事は僕の正面に机と椅子を置いて手帳を広げた。椅子に座った刑事は頬を持ち上げるようにして笑った。

「いや、初っ端からすまなかったね」

「いえ」

落ち着かない。目をそらしたくなるけれど、それは相手の思うつぼのような気がして、まっすぐ見返す。別にやましいことは何一つしていないのだから。