第一章 浩、狙われる!

直ぐ手から全身へ震えだし言葉も全く出なかった、怖い!

しかし無理やりドアの方へ足を運び、ドアスコープをそっと覗くと、髪が角刈りでサングラスをかけ工事業者が着そうな少し長めの作業ジャケットを着て、ドアスコープの方をじっと見つめている男が居た。

「お客様! どなたかお探しですか?」と言う声が聞こえた。男はそれを無視し黙ったままエレベーターの方へ歩いて行った。少しして、ノックが有り、「カレーライスをお持ちしました!」と言う声が響いた。

浩は、ホッとしてドアスコープからボーイを確認すると共に、周りに誰も居ないのを見て、ドアを開けた。ボーイがカバーを被せたご飯と湯気の立つカレールー、氷の入った冷たい水とミニポットをトレイに載せて入って来た。入って来るそうそうボーイが、「ドアの外に不審な方が立っていましたが、ご存じの方ですか?」と聞いてきた。

「全く知らない人が『届け物です!』と言ってノックしたので、ドアスコープで確認していたところです。どんな人でした?」と聞くとボーイが、

「良く聞こえませんでしたが、一言二言何か言われたのです……あの方は日本の方では無いですね! 南アジア系の方? ……いやC国の方でしょう!」

「私が問いかけても聞こえない振りをして、エレベーターの方へさっと行って、少し見ていると、来たエレベーターに乗ってしまいました」

「日本の方は、あのような振る舞いをなさる方は先ずいらっしゃいません! 海外の方が多いです」と言った。浩が、「そうですか……変な人ですね!」と言いながら、「明日の朝、早く出ますので出来れば今の内に宿泊精算をしたいのですが、そこの電話で精算額をフロントへ問い合わせていただけますか?」と言うとボーイは、「どんなに早くてもフロントで対応出来ますよ」と応えた。