浩は、「勝手ですが、出来れば今したいので、お願い出来ませんか?」と更に頼むと怪訝な顔をしながらも、「分かりました」と答え部屋の電話でフロントと話をして、「全て入って、18,780円です」と言った。浩は、直ぐ財布から二万円を出して渡した。受け取ったボーイは、「フロントへ戻って差額をお持ちします」と小走りに出て行った。

暫くして戻り、差額と領収書が入ったホテル封筒を差し出しながら、「先程の方が何処かに居られるか少し気に掛けながら行きましたが、何処にも見かけませんでした」と教えてくれたので、浩は、「ありがとう!」と返事した。

ボーイは、「召し上がられたカレーライス等は、そこのテーブルの上に置いてお出かけください。後で私共が下げますので気にされないようにお願いします。それでは失礼致します。おやすみなさい」と言って部屋を出た。

浩は、ボーイが話すのを黙って聞いていたが、今迄の動きからあの不審な男は必ず何処かで浩を見張っているに違いない! と確信していた。

あの男は、浩が持っているブリーフケースとブレスレットを何としても手に入れようとしている。浩は強い恐怖感を覚えながら、何故其処までしつこく手に入れようとするのだろう? それにあの男は一体何者だろう?と考えていた。

確かにドルは、百五十万近くになるほど有るが、お金だけでこんなにしつこく付け回すことはしないだろう。やはりあの英語の書類か、ブリーフケース又はブレスレットに何か工夫がして有り、どうしても欲しがる貴重な物が隠されているのかも知れない……。