第一章

5 私の挑戦

所詮日記の内容など、陳腐なものかもしれない。他の人間がコンパやオートキャンプ、スノーボードなどで謳歌(おうか)した青春と同様に。しかし私には、日記が残されている。青春の現物が。ほとんどの中年が過去として、思い出としてしか所有できない青春を、私は現物として所有しているのだ。

そう考えると、ただのルーズリーフでしかない日記帳が、希少価値のある宝物のような感じがしてくるのだった。そして日々をたどり、同じ生活、同じ行為、同じ考えを所有することによって、もう一度過去を生きることができる、若さと青春を取り戻し、濃密な時間を味わうことができるかもしれない。

それは単に過去を取り戻す行為ではない。様々な経験を経た今の私が、再び過去を所有することで、変容という作用が起こるのではなかろうか? 私は目には見えない変容を遂げ、ただならぬ存在と化す。ハリーポッターのように、サイババのように。そんな予感さえした。だから私は、ただ後ろ向きに過去を求めたのではない。そんな味わって得する美味しい過去など、どこにもない。ただそれをすることで、これからの長い人生に、劇的な変化がもたらされるような気がしたのだ。

──かつて記した日記の通りに生きてみる。