第3章 シーズンの記録から見た長嶋②
真の4番打者
真の4番打者は長嶋だと言いたい。
よく「記録は○○が上ではないのか」と言う人がいるが、記録はその人個人自身の実績としては認める。しかし、4番打者と条件がつけば違ってくる。4番は、“どういう場面”で“どうだったのか”ということを考慮しなければならない。観客の期待している場面で“それに応える”打者であったか、そして、それが“勝利(優勝)に結びついたか”ということだ。下位のチームなら、無理して打ちにいくような、また、逆に無理せずに四球を選ぶようなこともできるため、個人記録は狙いやすいに違いない。
しかし、本書では記録で長嶋のすごさを伝えるものだ。当然、個人記録が貧弱であっては真の4番打者とは言えない。
そこで、長嶋及び主要な4番打者の通算記録をのぞいてみよう。
なんの何の“記憶の長嶋”ではない。かなりの記録保持者である。
ただ、単純な通算記録比べなら、長嶋の上は多くいるだろう。しかし、次ページから延々と述べていく数値をよく見比べてほしい。長嶋にしかないすごさが理解できるだろう。
4番打者としての成績
長嶋の「4番打者」としての成績はどうだったのであろうか?
長嶋は3番を始めとして、晩年は1番も経験している。各主要打者と比較した成績は次の通りである(数値はプロ野球100人『栄光の4番打者』日刊スポーツクラブ平成21年8月11日発行より)。
4番打者1000試合以上出場の主要打者を対象に、ランダムに選出した。順位は一試合当たりの打点数とした。順位は王が一位である。長嶋は4位につけているが、試合数が多いことも関係しているだろうか。
も長嶋、王、張本を比べてみた時におもしろいのは、通算打率は張本、長嶋、王の順なのに、4番打者打率は王、長嶋、張本と逆になっていることだ。試合数の関係もあるが、4番打者率は王が一位である。王のすごさがここにもある。