そうなのです。今度のこの第二のレスパイト山中入院は、折悪しく病棟増設工事のため、お風呂が利用できなかったのです。

家では週一回、訪問入浴部隊のみなさんによって、隅から隅まできちんと洗ってきれいにしていただけるのですが、これができなかったのです。

また、家では、訪問看護師やヘルパーさんたちによって、朝夕きちんと二回、清拭、陰部洗浄もしていただいているのですが、この病院は入院患者さんも多く、思うように手が回らないようなのです。

基幹病院であれば、勝手知ったるわが家ということで、私たち家族が洗濯場にいつも用意されている蒸しタオルできれいに拭いたりできるのですが、何しろ初めてのところであり、家族としても、お湯の出るところも判らず、まるで勝手が悪く、なにも出来なかったのです。これが現状だったのです。家では清拭は勿論のこと、ひげそりも至れり尽くせりで、うっかり家族が手を出そうものなら「やめてください。私たちの仕事がなくなります。私を失業させる気ですか」と冗談を言われながら、いつもこざっぱりとさせていただいていた身なので、その落差がありすぎたというものなのです。

病院が増築中との説明をすると、ヘルパーさんの泣き顔もやっと笑い顔に戻りました。

これらの事情から、急きょお風呂『どすこい群団』の古川隊長に無理なお願いをして、訪問入浴に来ていただきました。

この隊長も、入院中わざわざお見舞い下さり、現状をしっかり把握してくださっていたのです。

「さあ、堀内さん、二十日間の垢をしっかり落としましょうね。一、二キロ痩せるかもしれないけど、ガマン、ガマン」

といつもの如く軽口をたたきながら、ていねいにお風呂に入れてくださいました。

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次回更新は10月22日(火)、11時の予定です。

 

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