仲山はスマートフォンでゲームをしないが、電波がなくてもできる簡単なゲームくらいは最初からインストールされている。他にも、電卓や時計などのアプリケーションを使うことができた。今日の仲山は真新しい腕時計をしているが、今や時計をつけるということはファッションに近い。

とはいえ、もしスマートフォンの電池が切れた場合、仲山にとって時刻を確認する手段は腕時計か、ゴンドラ内から見える時計台しかなくなる。何でもデジタル頼りというのも心許(こころもと)ないものだな、と仲山は考えた。

「早く降りたいよ。凛もう飽きたよ、ここ」

娘の不満そうな声を、仲山はなだめる。

「もう少しの辛抱だ、いい子だから。クマちゃんと風船で遊んでいよう?」

「……まあいいよ」

凛は仲山のプレゼントしたクマのぬいぐるみの手に、風船の糸を巻き付けた。黄色い風船はふわふわと浮いて、凛はそれをつついてぼんやりと遊び始める。

「ところで、お母さんとはうまくやってるのか? 今は連絡が取れないけど、きっと心配してるだろう」

「うん、ママはいつも優しいし好きだよ。さっきも、あとでプレゼントくれるって言ってくれたもん」

「クリスマスプレゼントか」

「そうだよ!」

「サンタは……」

「知ってるよ。サンタはね」