五 午後……十二時四十分 ドリームランド内社員食堂
「貝崎さん! ちょっと困ったことになりました」
従業員食堂から出た貝崎を見て、さっそく情報分析官の金森がすり寄ってくる。
「何だ?」
「観覧車を動かしてるシステムを押さえろって話だったじゃないですか。それで、システム管制室とドリームアイの真下にある運営局のどっちにも人を入れたんですが、片方が使えなくなりまして」
「簡潔に言え。どちらがだ?」
「真下の運営局の方です。どうもゴンドラ落下の衝撃で、どこか送電線がやられちゃったんでしょうね。停電しちゃって動きません。ついでに、誘爆(ゆうばく)の危険があるってことで、消防からドリームアイ近辺からは警官も避難するように指示っていうか、要望が来まして……」
「おい、もしかして消防は引き上げたのか? 観覧車の下の方のゴンドラなら、乗客は助け出せるだろう」
「いやそれが……ゴンドラの開閉は自動制御なので、ドリームアイのシステムを動かせないと、扉も開かないんですよ。重機(じゅうき)なんか持ち込んで無理矢理壊すしかないくらい頑丈な箱なんです。もちろんそんなことはできないんですけど。無理したらまたゴンドラが落ちるかもしれませんし……」
「開けられないのも停電の影響なのか?」
「いえ、ドリームアイ本体に電源は通っているそうです。だからシステムが元に戻ればゴンドラは開閉できるはずです。あくまでドリームアイ真下の運営局のみが使えなくなって、使えないならここは危険だから避難しろと消防が」
「全く、安全第一で捜査ができるか!」