貝崎は怒鳴る。
でもあんな危険な現場でやれる作業じゃないんですよ、と金森は困り果てた顔で言う。
「それで、とりあえず運営局にはサブの部屋があるっていうんで、そっちに人を移動させました。そっちはシステムの電源が入ってますし」
「で? ゴンドラのドアは動かせそうか? 緊急時にドアの開閉ができる独自電源くらい、ゴンドラには積んであるだろう?」
「それが……ドリームアイの運行システムは現時点で『正常』なんです。なので、非常用にドアの開閉も許可されないんです」
「……システムを直すしかないのか。どのくらいかかる? 目途は立っているのか?」
この質問に、金森は首を縮めて丸い背中を更に丸くした。その仕草は、見通しは何も立っていない、という意味でしかない。
貝崎は舌打ちして金森を追い立てる。
「その、サブの部屋とやらは屋根があるんだろう。寒空の下の捜査本部じゃやる気も出ない。今のテントから機材を移動させろ。急げよ!」
敬礼した金森が去った直後、貝崎の携帯に連絡が入った。落下したゴンドラで燃え残っていた身分証明書を元に自宅に向かわせた捜査員から、藤沢家が不在であることを確認したとの報告だ。貝崎は園内を歩きながら呟く。
「死亡者は藤沢、か。もう一人は妻だろうな。……そして生き残ったのが仲山だ。これは、運命なんだろう。全ては五年前から繋がっている」
貝崎は風の中にそう言葉を残して、捜査本部へと足を急がせた。
六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内
時刻は十二時五十五分、静かに仲山は何かを待っている。
「また連絡は来るはずだ……」