「僕と滝口さんとは年も離れてるし、立場も大きく違うよね。従業員が多い職場でもあるし、話したのは今さっき、ドリームアイが止まった時が初めてじゃないの? そんな子から急に声をかけられるなんて不自然だよ。まあ、君、可愛いし嬉しかったけどさ」

さっき言ってた仲山って人が関係してるとか? と聞かれて滝口はうろたえた。

「えっと、それは……」

「あのさ、僕だって事故のことを知りたいんだよ。僕にとってドリームアイは家族みたいなものだ。その家族が誰かに傷つけられ、命を奪うもの……殺人観覧車になるなんて、夢にも思わなかった。僕は責任者だし、愛着もあるわけでさ」

「え、ええ。わかりました。あまり大きな声では言えませんが、宮内さんも話してくださったので私もお話しします。ご想像通り、ある人に言われてここへ来ました」

「それが仲山って人なんだね、警察の捜査員?」

「いいえ、ドリームアイの乗客です」

「乗客って……まさか、今観覧車に乗ってるってこと?」

「ええ、そうなんです。落下事故のあと、私以外のスタッフは、宮内さんの指示通り、待機列の乗客を避難させてました。それで私だけ真下の運営局に残って、アナウンスと連絡係を担当してたんです。その時、ゴンドラ内から通話がかかってきて話をしました」

「なんでその人が僕のことを知ってるんだ?」

「宮内さんの名前を知ってたわけじゃないです。その仲山さんって人は、ドリームアイのシステム担当者と話して欲しいって。何も情報がないからって。それと……これは不慮の事故ではなく、計画的な殺人で、犯人がいるって言ってました」

「何だって? それ、ホントかよ!」

宮内は大きな声で叫び、滝口が口元に人差し指を当てる。今度は宮内が、慌てて声をひそめた。

「実はですね。既に接触してきてるらしいんですよ、犯人。ゴンドラ内のアナウンス用のスピーカーを乗っ取ってるらしくて。これは間違いなく事件だって、その人が断言してました」

「とても信じられない……」

宮内は眉間に深い皺を寄せた。何か疑念を抱いているのは明白だったが、滝口は話を続ける。

「ドリームアイに乗る前のその方とお話ししていますし、お子様連れで悪い印象もなかったので、とりあえず信じました。でもやっぱり、冷静になると少しおかしいですよね。する意味がないし、ありえないじゃないですか、観覧車ジャックなんて」