「いや、わかっている。『ドリームアイ』のシステム復旧の目途なんて立っていないんだろう」
『あ……はい、実はそうなんです……』
「だから地上の情報が頼りだ」
そこで、落ち着きを取り戻そうとするかのように滝口が大きく深呼吸をする。
『では、仲山さん。私は何をすればいいですか?』
「ありがとう。こっちも、観覧車停止の原因がわからないのは理解している。まずは地上の様子を教えてくれ」
『ええと、さっき地上に落下したのは五番のゴンドラです。消防の人が来てくれるそうなので、ゴンドラの消火は多分任せるんだと思います』
「うちの隣のゴンドラだな。ご夫婦が乗っていた……」
『……その、乗客の方は、おそらくは……。でも、ドリームランドの運営から警察、消防、救急には連絡したそうですから、あとはお任せする形になるかと』
「そうか。そうなれば現場から君は追い出されるだろう。警察は禁止線を張って、現場保持に努めるはずだ。その前に言っておきたいことがある。これは警察には話さないでくれ」
そう言うと仲山は窓の外に視線を送った。
道の向こうからサイレンを鳴らしたパトカーや消防車がやってくるのが見える。
『お詳しいんですね、仲山さんは警察関係の方ですか』
「違うといえば違う。そんなことより今知りたいのは、この観覧車『ドリームアイ』のシステムだ。緊急時のマニュアルは用意されてると思うんだが、知っているか?」
『はい、研修で読んだし、実践もしてます。観覧車で事故があった場合の対応とガイダンスの流し方とか、そういうのが書いてあるものですね』
「そうか、犯人は間違いなくそのマニュアルを見ているし、ドリームアイの構造に精通してる。内部の人間で、かつ機械に詳しい可能性が高いんだ。このシステムの責任者はわかるか?」