「ほら見てよ、みんながあんなに小さいよ」

「ああ、そうだな。……それにしても凛は怖くないのか、凄いなあ。思ったより高いぞ」

「うん、凛は平気だよ。だって強いもん」

凛は窓の外の景色に釘付けだ。覗き込むようにして下を見ている。仲山は恐る恐る下を覗いては鳥肌を立てた。そこで、ポケットにしまっていた時計を一瞬取り出して時刻を見る。今は午前十一時五十二分。本来なら、正午ちょうどに真上に来るゴンドラに乗るはずだった。しかし順番を譲ったことで、それより三十度傾斜した場所から、例のアレを見ることになる。

「凛、あと八分でお昼の十二時だ」

「ふーん、ご飯の時間?」

「パンとお茶は買ってあるぞ。ジュースはさっき溢してしまったから……」

「じゃあそれでいいよ」

ドリームランドは、昔ながらの遊園地なので弁当持ち込み可となっていた。仲山が持参した鞄から食料を取り出す。

「凛、あっちを見てみよう。時計台があるだろう?正午になると人形達が出てきて動くんだぞ、それを頂上近くから見れるんだ。あの時計台がよく見えるように、この観覧車は設計されたらしい」

「人形劇?」

「そうだ、凄いだろう? ドリームランド誕生のお話だそうだ。小人がお姫様に恋をするんだよ」

「お姫様が出てくるの? すっごく楽しみ!」

娘が次第に明るく打ち解けてくれるようになり、仲山の胸は熱くなった。かつて惟子とは些細なことで喧嘩ばかりしていたので、親子の関係も決していいものではなかった。別れてからずっと会っていなかったが、娘といられる時間がかけがえないということを改めて実感し、一人頷く。

ちょうどその時、ゴンドラが、ぐらりと大きく揺れた。

「きゃあ」

「凛!」