どこまで来たのだろうか、近くの公園のサルビアが烈風に赤く憤っている。なおも早歩きで歩き続ける柚子に蓮が呼び掛けてくる。

「おーい柚子待てよ。ちょっと休もうぜ」

柚子は相当頭にきていたのか、滅茶苦茶歩いていたようだ。

「それにしても、あんたたち何よ。直ぐ捕まったの?! 情けない」

「そういうお前たちだって誘導されて来たんだろ。人のこと言えないだろ」

颯太にまで突っ込まれてしまう。

まあまあ、仲間割れはそのくらいでと大和が直ぐに割って入る。うん、気遣いができる奴だ。

「要するに、私たちは来ていることを、最初から見破られていたということだねぇ」

したり顔で陽が言えば、

「ということは、私たちの顔が割れていたということ。何で、どうして?」

私の頭の中は?でいっぱいになる。そこに陽が分析するように話し出す、

「実行委員になった時点で学校広報に顔付きで紹介されるから、それを入手したんだろうけど。偵察に来ることも予想していたということは、彼らは元々既にそんなことをやっていたということじゃない」

「そうそう、やっていたんだよ。先輩たちからそんな話は聞いてないから、こんなことをしたのは我が校では俺らが初めてみたいだけど、相手さんは前からずっとやっていたんだということだなぁ」

落ち着いた大和が言い聞かせるように言う。

「ところで、捕まるまでに撮れた写真とかあるの。中央棟は模擬店が主なだったけど。気を付けているのはエコとリサイクルだねぇ」

「全てに関して理事たちおじさん連中におもねっているって感じで、私は嫌だったね」

柚子がさっきの眼鏡くんの顔を思い浮かべながら嫌そうに言う。

「俺たちが見た東棟は、過去の地球の地形についての、やたらデカイ展示物があった。それには日本は勿論、南北アメリカ大陸らしきものもないんだ。え~と何だったかなぁ。ゴンドワナ大陸だったかなぁーまっ写真見ればわかると思うけど。とにかくそれがあってテチス海とかいうものがあった。何万年も前の地球だ」

「それで後は有機生物のいろいろを説明するパネルなんか諸々。もっと他の展示物をと思ったんだが見る前に、数人にこちらへと促されちゃって」

そう蓮が話すと颯太も同じだと頷く。

「私たちの見た西棟は、未来に今の地球を残すために何ができるか? そんな言葉が掲げてあったわ。文章ばかりだと面白くないからか、小型のソーラー電池内蔵のエコカーレースなんて物もあったわね。それを作ったチームごとにタイムトライしていて結構楽しそうだった。

他には化石燃料の枯渇に備えた太陽光発電、風力発電の代替、地球温暖化による海水温度の上昇により漁労水域が変わってくる、海がらみで捨てられるプラスチック等での被害の改善策とかを絵付きで説明してあった。まだあったけど、蓮たちと同じで見る前に捕まっちゃった」

【前回の記事を読む】いざ敵情視察!放課後私服に着替えて、姉妹校の文化祭へ出陣。

先行配信はここまでとなります。次回連載予定は未定です。

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