第一章 学園祭は決戦の場

いつも何事に関しても理路整然と話をまとめ上げる詩こと中村詩。ちょいちょい放つ強烈な言葉に腹の中に蛇を飼っているようだと思うのだが、自覚はないようだ。

そして運動バカの清水颯太、バカが付くくらいハンドボールクラブ頑張って練習するおかげで来期は主将間違いなし。エリア外からのジャンプシュートは華麗を極めるポイントゲッターだ。

林大和は休みにはどこかのお店かと見まがうほどに集められたアニメ本とDVD及び新旧全てのゲーム機器が揃う部屋から一歩も出ないような人間だ。

それから吉田連、こいつがまた変わっている。工務店を営む親御さんの影響なのか、とにかく建物に対する執着がすごい。

大和の持ってきた学校でのDVDの秘密上映会。異星人に対する俳優トイル・サナスの活躍の映画だったのに、蓮は何とそこに出てくるグッゲンハイム美術館の巻貝のようなフォルムについて説明し、何度も何度も検証だと言って巻き戻す有様。DVD最後まで見せてくれーと私は叫んだ。

始業式も終わり、カラオケでも行こうかと盛り上がっているとアナウンスが流れた。

そして生徒会に呼ばれた私は驚きの依頼を受けることになるのだった。

今年学園祭実行委員長に抜擢されたのは柚子である。「どうして私なのか!」と柚子は釈然としていないが、昨年楽しくてわけもわからず先輩の言うことを聞きまくり、頑張ったのがいけなかったようだ。

本人は本当の学園祭の意味を知った時、あまりの責任の重さに、総毛立(そうけだ)ったという。他の実行委員は柚子と仲の良かった中村詩と清水颯太。二人とはやたらと気が合う。そしてアニメ好きの林大和、建物にいやに詳しい吉田連。

彼等も引き入れた組だが、募集もしていないのに渡辺陽菜(あきな)はやる気満々で立候補してきた。どこか大人びた雰囲気のある割には、最初から親しげで話もよく聞いてくれ、ずいぶん頼りになる感じの人だ。

本来ならば学園祭実行委員は生徒会の役員が例年務めていたのであるが、ここ数年ずっと推薦枠が半分を大きく下まわり、なんとか打開策をと考えられて、やる気十分の人たちに託そうと考えられたらしい。そんなんでいいのか? は~どうしようー。

何をどうするか決めかねていると、陽(あき)が(もう下の名前で呼ぶことにした)姉妹校が今現在学園祭を行っているので秘密裏に見学に行ってはどうかと提案してくれた。それもそうだ! 前の実行委員の先輩たちには言えない姑息な手段ではあるが、背に腹は代えられず。